2020年のフレッシュ-その4- 「自分で自分の風に乗って」

ラスト7時間。

硬い舗道を駆けていく。飯能から日高を抜け、ついに華の都東京へ。といっても日曜ド深夜2時の青梅だ。この辺で見かけるのは飲んだくれやこんな時間になぜか犬の散歩をさせているサンデーピープルくらいしかいない。今は無い東芝青梅事業所の通りや、小作のアンダーパスは、2014年の白馬・木崎湖600で通って以来の勝手知ったる道だ。懐かしさに浸る。

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 多摩川を渡った先にある滝山街道の満地トンネルを登る。この近くには東京都唯一の火薬類試験が行える工場があり、最近知ったのだが警視庁の弾薬製造所は「秋川工場」として秘密裏にその側に所在しているようだ。*1といってもグーグルマップに載っているくらいなので、いわば公然の秘密なのだろう。

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このトンネルを通ると「帰ってきた」という気持ちになる。

 八王子・高尾も馴染みの深いところばかりなのでエモめな道だ。あきるのIC付近の交差点で、ふと横を見るとサマーランドへの案内看板が見えた。パラソルの下ソーダとかシュワシュワポンする季節も終わり、ひたすらに寒い。サマーランドに行きたいけど、やっぱ今じゃないよな。トンネルを抜け、戸吹町の交差点から高尾街道を走る。

 

 この時、残された制限時間から考えると時間の余裕もなく、平均時速15km/hで考えた際、22時間通過予定地点にはほぼちょうど着く計算だった。アップダウンに難儀しつつ、大戸交差点から城山へ。いよいよ神奈川県。城山ダムを抜けて、ようやく見慣れたコンビニの風景が映り込んだ。

PC5 ファミリーマート津久井太井店 03:50

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使えるものは有効活用します。だれもいないので。

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ここでは10分の休憩を取る。せいぜい最低限のカロリーを取ることで精一杯。何をトチ狂ったか寒いのに冷たいものを買ってしまった。300円くらいするイチゴみるくを一気飲みする贅沢。普段コンビニで買い物する時には躊躇するものを遠慮なく買うのがささやかな幸せだ。あたたかいものを飲めば良いのに。その代償として、胃が冷えてちょっと気持ち悪くなったことは言うまでもなく。再出発の時、クリートをはめる音だけがしんとした空間に響き渡る。

 いやらしいアップダウンを2回やり過ごした。この辺りは本来相模湖が見えるはずだ。穏やかな陽光を浴びながらスワンボートに乗って時間も忘れて遊び呆けていたいが、今は10月の午前4時半。ふと西の空を見ると、僅かながら色彩を感じる。ため息の後の、インディゴブルーの果て。明けそうで明けない夜が続いていく。

 相模湖駅前から甲州街道に合流し、そこからはほぼ上り基調の一本道。上野原の近くで、こちらに向かってくる自転車が見えた朝靄越しに見えた。1台だけではなく5台も。僕らは石和温泉へ向かうが、彼らは日本橋目掛けてすっ飛ばしていく。すれ違い様「気をつけて!」と声をかけ、健闘を祈る。

 そうこうしているうちに、雨はすっかり止んだことにふと気づく。早く着いて欲しい。すばやく駆け抜け安堵したい。頑張っても時間の貯金がなかなかできないのは、栓をしないまま湯を張ってしまった浴槽のよう。オールなんてここ最近した記憶がない。やたら耳に音が響くし、こころとあたまが分離しているみたいな気分だ。

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道をただ道なりになぞり続ける

 兼定さんは大月市街の手前で「60秒休む!」と言って、立ったまま自転車のハンドルに頭を預け始めた。呼吸の度に肩が大きく揺れる。睡眠に全集中。65秒ほど経ってか、「OK!」と声を上げたところで、再スタートを切った。安定感のあるたなさんとならさんはまだまだ元気そう。おれはもうだめです。

 

22時間チェック ローソン大月下初狩店 07:00

 やっとたどり着いた。予め計画していた通りだ。ゴミ袋で受け止めてほしいくらい雨で身体がくさい。イートインで胃腸対策のヨーグルトとカロリー対策のおにぎり、ホットカルピスを買う。合理的だと思う。グルメのことは頭にもうない。

 レシートをゲットした後、最後の一息ということで記念撮影。前方の顔色と最後方たなさんの顔色を比較すると同じことをしている人のようには見えない。

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22h記念撮影。顔がぐったり。

 

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いよいよラスボスの笹子峠に向けて登る。ローテーションで先頭を走っていた時はよかったのだけれども、最後尾についたところで完全に千切れてしまった。先行しているみんなに声を掛ける気力もなく、みんなが遠くなっていく。なんでこんなところに家を建てるんだ?なんでこんなところに警察署があるんだー!*2と心の中で悪態をつく。

 途中で気づいていただき、最後は頂上まで先頭で走らせてもらった。申し訳ないし、ありがたい。頂上で休憩の際に水を飲んだら冷静になることができた。当たり前だけど、フレッシュはひとりでは完結しないとひしひし思う。東の空は気づいたら青かった。

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 笹子トンネルから最後のPCまではひたすら下るだけ。これまでの350km弱の道のりがすべて報われるようだった。あたたかいトンネル。乾いた路面、あっという間に、標高800mの発射台から最大瞬間の速さで景色が流れていく。自分で自分の風に乗って。甲府盆地が見えた時のタイムワープ感といったらたまらない。

 最終PCのセブンイレブンが左手に見えた。時間もちょうど良い頃合いだ。とりあえずびしょびしょのマスクを身につける。カレーヌードル*3を選んで、レシートをゲット。ふっと肩の力が抜け、口元が緩む。店の外で待っていたメンバーと声をあげる。やりきったことで、これまでの辛さが全て報われていい思い出になった。だからブルベとか続けるんだなぁと思う。

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完走した4人で記念撮影。やっぱ1人足りないのはさみしいから、もし走ることがあったら、今度は5人で辿り着こう。

「お風呂に入ってはやく人間になりたい!」と言ったけれど、家に帰れば、少し歪になってしまった日常生活が待っている。ほんのちょっと、この自由な時間を味わっていたいとも思った。

 

 

 

 

*1:https://blog.goo.ne.jp/1940sachiko/e/751dd1d2b2af8b4b5db5a2f34f1cfcc3

*2:大月警察署はなぜか市街地ではなく坂の上にある

*3:山梨にらゆるキャン△ゆるキャン△ならしまりんという発想。ちなみにしまりんはこんなことしないとおもう。

2020年のフレッシュ-その3- 「だめです。ここでやめます」

PC2- ローソン道の駅グランテラス筑西店 17:15

 PC2のコンビニは、もともとは田畑であった場所を買い取って、2019年夏に道の駅と併設してオープンした。なので周りは真っ暗で、建物だけが照らされている。その光景は不自然で、実家近くの急造ロードサイドのことを思い出す。

 ようやく佐野ラーメンにありつけると思ったが、ずく*1もないので、コンビニ飯。最初は通過証明のレシートを貰いにいくつもりだけだったが、流れでパスタとおにぎりというガッツリした食事を買ってしまった。普段とは逆の考えでカロリー表示をじっと見る。

 座るところが見つからず、屋外に休憩用の屋根付きテーブルがチラホラあるので、寒空の元食べることにした。

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道の駅で寒空の元コンビニごはんを食べる光景。コタツで食べるアイスみたいにはいかない。つらい。

あたたかい。おいしい。言語能力が低下しているが、正直カロリーと塩分が取れればなんでも良いのである。食べ終わってコンビニに再び入りふと左側を見ると、イートインコーナーが堂々と鎮座していた。

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ちゃんとあたたかい場所で食べられる場所はあるのだが、誰も気づかなかった。

 40分休憩ののち、再スタート。

 ここから先はライトだけが頼りの世界。雨はじゃばじゃば降っているけれどもみんな段々ハイになっているのか「楽しくなってきた」とか言っている人もいる。お水飲んだら雨水より美味しい、幸せ。みたいな水準で行けば、この先どうとでもなる。

*2

 

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 県境のカントリーサインがなければ気づかなかったけれど、再び栃木へ。ルート上にパリ・ブレストが食べられるお店があることは知っている。ただ、そのお店の閉店時間はとっくに過ぎていることも知っている。兼定さんが昨日の夕食で「楽しいグルべだった」と半ば冗談で話していたが、結果そのとおりでここまでグルメとは無縁。「ゆるふわグルべ」とは対極の「コンビニ飯スタンプラリー自転車漕ぎ漕ぎマシーン」*3と化していることは間違いない。でもまぁ、とにかくそのときは、大休憩のための貯金を稼ぐことが1番だった。

PC3-ローソン館林青柳店 20:50

 あっという間の栃木県は終わり、渡良瀬川を超えて館林のローソンに着。ここでドリアをチンしてもらうも有料となったレジ袋を頼み忘れ、「ホントに熱いっすよ」というお兄さんの言葉通り、頭が回らない僕は熱いアツアツドリアを素手で受け取り変な声が出そうになった。なんだこれは。俺はリアクション芸人か。ここで20分の休憩。コンビニの軒先で立って食べるドリアには風情がある。

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床屋もポツンとある公衆電話もなかった。

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ストリートで食べるドリアは美味い。

 ローソンを出発すると、すぐ埼玉県に入る。利根川からアプローチだ!

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さいたまー!

 行田のあたりで、ならさんがルート上に心霊スポットの廃工場の横を通るということを教えてくれた。幽霊は見たくないけど、そういうものはあってほしい。

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気温は10度くらいなのです。コンビニトイレの水道水があたたかいという逆転現象。

 行田でゼリーフライ十万石饅頭陸王も無縁な我々は、熊谷を通過。雨が強くなって参りました。さむいぞ熊谷。

 

PC4-セブンイレブン東松山唐子店 22:50

 東松山セブンイレブンでこの先の作戦会議。

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飯能のココスか高尾のカラオケバンバンまで進むか。メンバーの姿を見るとすこし眠そうにしている人もいる。僕はがんばれば高尾まで行けると思ったが、飯能ココスへ行き食事と休憩を取る作戦に決定。結果これが正解だった。

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 数年ぶりに通る笛吹峠。

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 先頭のたなさんに続き、高麗川にかかる橋を渡る。と、突然グラベルが見えたのでスピードダウンして通過を試みる。ところが視界が上下に揺れる。工事中だ!

 なんとかクリアしたが、最後尾にいたリョウ君が止まるときにうまく行かず立ちコゲのような状態になってしまった。緊張が走る。特にケガや走れない状態でないことを確認。安堵して再スタートを切る。

 このあたりからリョウ君のペースが落ち始める。日高から飯能に登る一番の坂道では前方の二人についていけない。もう少しで休める。高尾まで行けると踏んだ僕も先程から眠気が少しずつ増している。まぶたが重い。目を瞑りたい。しばらくして、一段と目立つ黄色いココスの看板が視界に入った時は心底嬉しかった。スマホを開くと、日付は変わって0:25。スタートから15時間は経過していた。

 何を食べるかメニュー表を見て優柔不断に悩んでいるだけ、元気はあると思った。腹が減るなら大丈夫。リョウ君はかなりぐったりきていて、お粥を注文していた。自分の身を守ることで精一杯な状況の僕の横で、兼定さんがリョウ君に「どうする?胃腸薬飲む?」と声を掛けている。

 とりあえずはカロリーということで、マグロ丼とハンバーグのセットをチョイス。食べたら目を瞑って意識が遠のくのを待つ……が神経が高ぶっていて寝れない。通路挟んで隣のテーブルでは、地元のおねえさんが人生相談らしきものをしている。普段は気にならないことが全て気になってしまう。それでもテーブルにうつ伏せになり、ひとりだけのわずかな暗闇を作り出す。目を瞑っても、ストロボライトが常にチカチカしている感じ。それでも数分は半分意識が遠のいた。

 

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みんなキテる。

 

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深夜0時の食事。醤油を遠慮なくどばどばかけた。

いそいそとみんな、準備をはじめる。ひとり虚ろな顔のリョウ君が「だめです。ここでやめます」と言った。テーブルに置かれているお粥は半分しか減っていない。そこまでやられているとは。気づかなかった。走り出したらなんとかなるかもしれないが……。残念ながら、ここでひとり離脱することになってしまった。

 飯能でビジネスホテルを取り、帰宅することを決めたリョウ君と別れる。深夜1時半、4人はこの季節の関東平野にしては寒い、気温一桁台の路上へと駆け出す。

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*1:長野県の方言で、ざっくりやる気の意味と捉えてもらえればOK。使い方としては“ずく出す”とか

*2:まさに落武者魂というか。ちなみにさとーさんが起源だったはず。http://terrazilongestmarch.blog63.fc2.com/

*3:みいさんのこの慣用句に最近ハマっている

2020年のフレッシュ-その2- 「レインウェアと横浜家系」-

  おは軽井沢。朝6時半、目覚めてみるとぱらぱらと地面に水滴が当たる音で目が覚める。にらめっこしても天気予報は変わらない。*1。軽井沢の気温は7度ということでちょっとさむい。降水確率は90%、関東も夜半まで振り続ける。DNSをするチームも多数確認できた。でもまあ、これはもうどうしようもならないですなあと、割り切っていくことにする。

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 ホテルの朝食。とてもフレッシュ当日とは思えない絢爛さであった。小躍りする。着座すると最初にポタージュが出て、その後にフルーツ、ガレット等のプレート、最後にフレンチトーストが…みたいな。特にフレンチトーストがふわふわでお気に入り。お代わりを勧められ、もう一つご馳走になってしまった。くるしい。

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フレッシュ当日の朝食です。

 身支度をしてホテルを出ると一気に現実に引き戻される。これから24時間自ら望んで濡れ鼠になるとは奇妙な話しぞ。いや、雨は望んでいないけれども。出発するところで前述のNSCフロントおじさんに写真撮影を頼まれ、快諾。

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「こういう旅行客の写真を載せるとお客さんが来てくれる」とのこと。じゃんじゃん使ってくださいな。お礼の言葉を伝えてから、スタート地点へ急ぐ。

 

10月17日(土)-スタート地点 ファミリーマート ヤオトク軽井沢店- 0km 

8時50分にはみんなもうすでに到着していた。9時になったらレシートを確保するために買い物をするのだが、このあたりからみんなテンションが上がる。店内の音楽が少しスローに聴こえる。そわそわしながらふと、たなさんを見ると「七笑(木曽の地酒)」のボトルを手に持っているので笑ってしまった。それ、スタートで買うのねと。いったいどこに収納するつもりなのだろうか。安定感のあるたなさんだから、特に問題はなさそうだろう。

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 カウンドダウン。5、4、3、2、1……0!

午前9時。ここから長い24時間の旅が始まる。

 

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午前9時、レシート入手し記念撮影。「チームゆるふわグルべ」の24時間が始まる。

 スタートから1km弱でさっそく碓氷峠に辿り着く。ここから900m分下っていく。長野県にいたのはたったこの1kmだけだった。すぐ群馬県に入る。峠の下りは紅葉シーズン真っ只中で落ち葉だらけだ。ここで貯金を作りたいけれど、落車対策も兼ね、前走者とは少し間隔を開けてダウンヒルをする。ブレーキシューがみるみると削れていく。チーム最年少のリョウくんは、出発前にシューを新品にしたにも関わらずほぼ削れてしまっていた。それにしても寒い。スタート前に「碓氷の下りの寒さに耐えられそうにない」というツイートを読んだ記憶があるけれども、その気持ちは今イタイほど共感できる。*2寒くて「はぁぁぁっっ」とかよくわからない声が出る。

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 めがね橋で記念撮影をしてからは安中まで下り基調。とはいえ雨のせいで飛ばすこともできず、35km地点でおおよそ40分の貯金を確保するに至った程度。国道18号は渋滞もチラホラ。我々は予定通り旧中山道で回避。途中でならさんが「こんなにみんないったいどこに行くんや」と嘆いていたのが印象深い。

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高崎に入り、鼻高橋でだるまが乗っかかっているのを発見。確か高崎は日本三大だるま市のうちの一つだ。卒論でだるまのゆるキャラにお世話になっていた学生時代、そう教わったのを覚えている。今回は観光名所らしい場所は通らないし、道中飽きないようにこういう小ネタをできるだけ拾って楽しむことにしている。

 

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 それにしても先程からレインウェアがずり落ちてしまう。信号で、「なんかおかしくない?」とならさんから指摘をいただいた。股下をめくる……。「あれ?ゴム紐が後ろにあるじゃないか。どういうことだ……」と、ここで認めたくない事実を認める27歳。レインパンツを前後逆に履いていた。めたくたに恥ずかしい。幸い、PC1がすぐ近くだったので、そこで履き直すことにした。僕はお尻あたりに見えるモンベル のマークを忘れることはないだろう。そのまま伊勢崎駅から帰りたくなった。

 

-PC1 ローソン 伊勢崎大正寺町店-

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ここでの休止は15分と、リーダー兼定さんからの指示が入る。早速レインパンツを前後履き替える。急いで脱ごうとした時、下の動画を思い出した。なので慎重に座って脱いだ。たいへんよくできました。

www.youtube.com

 N2時代らしくしっかりマスクをつけて入店。トイレ、補給などの調整を済ませてしっかり15分で再スタート。10分ごとにローテーションをして、PC2の茨城まで走る。

 群馬も足利もスイスイ行けるだろうと思っていたら、かなりの信号の多さに難儀。とりわけ工場団地近郊は高速道路や住宅なども点在しているため信号がかなり多く、貯金の稼げない様はまさに信号峠といってもよい。それでもえっちらおっちら雨の中を走り続ける。

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 そうこうしているうちにもうお昼時だ。太田市あたりで山田うどんフライングガーデンに遭遇して北関東にいるという充足感に浸る。若鳥のうまいうまい焼きが食べたい。がここに寄る予定はない。久しぶりに行く地域だと、その地元の名店よりローカルチェーンが恋しくなる。

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 渡良瀬川*3経由で栃木県に入る。雨はぼたぼたと続く。一体何なん。降水量毎時1mmってこんなに降るっけ。どこのYahoo!天気予報だ。アスファルトの跳ね上がった雨水が口の中に入り、時折砂利の感触がする。大型トラックが横を通る時とかは特に。でもまあ致し方ない。ブルベ風情があってええじゃないかと割り切る。

 そうやって難儀しているうちに、ついに佐野市に入ったようだ。ビジネスライクな事務所を構えるゆるキャラ「さのまる」の姿でそのことに気づく。

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佐野ラーメンは?とちらっと時計を見て愕然。午後2時すぎあたり。まずい、間に合わない。結果、予め登録していた行きたい店には行けず、無情にもその横を通り過ぎていく。小三郎、日向屋、佐野らーめん417…。当然、ラーメン熱が高まる我々一行。諦めかけたその時、ならさんが「ラーメンだー!」と声を上げ、前方に指を差す。ついに希望の路が切り開かれたのか。我々の雨修行が実を結んだのか。その先に見えるは煌々と輝く深紅の看板「横浜家系 町田商店」。言うまでもなく通過した。

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佐野で唯一空いていた店が謎チェーンの家系ラーメン。我々の落胆は計り知れない。

 その後は淡々と走る。ただ、ずっと同じ風景で前に進んでいる感覚がしない。向かい風も相まってそう感じる。後ろの兼定さんからたまらず「次コンビニが左手に見えたら一旦休憩で!」とリクエストが入る。僕もそろそろ休みたかったのでありがたい。早めに手を打ったほうが後々引きずらないで済む。ここで20分の休憩。

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 財布はすでにビショビショで、お札はすでに使い物にならないので全てクレカ決済だ。雨のように泣いてやりたいくらい濡れ鼠だが、とりあえず人間を維持するためにトイレと食事を済ます。ぬれそぼった犬のように佇む中、コンビニの軒先で食べるフランクフルトは優しくあたたかいぬくもりがある。 

そういえば「おにぎりあたためますか?」と今日初めて聞かれた。山形では日常的だけど、他の地域はどうなんだろう。

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 先程の落胆を経て「佐野ラーメン食べたい!」から「ラーメン食べたい!」果ては「あたたかいもの!」に水準を下方修正して走る我々。次のPCは道の駅に併設されているコンビニだ。きっと佐野ラーメン風の店舗があるだろうと信じ込む。ようやくここで信号の数が減り、平均時速は上がった。もう空は薄暗い。貯金を稼いで、来たるべき長い闇を乗り越えるために頑張る。あと15時間走り続けるのだから。

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夜が来る。

 

 

 

 

*1:この日朝に聴いていたペトロールズの「雨」くらいにしっとりしていれば良かったのだけど https://youtu.be/smO6ZvcV0so 

*2:いぢちさん風に言えば、寒すぎてお手手がちんちんする。

*3:よくツイートされる公衆電話はこのすぐ近くだった。

2020年のフレッシュ-その1-「10月のフレッシュ」

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「フレッシュが10月に開催された」という事実は今年唯一であってほしい。

 本来イースターの前後に行われるイベント*1が、断りもなく急速に変わっていく世界のおかげで延期となってしまったのは、スタート1ヶ月前の3月末のことだった。フランス語で「矢」の意味を持つこのブルベは、3~5人でチームを組み、360km以上の道程を24時間以内に走る。そんなことを簡単に容認してくれる雰囲気は既に僕の周りでは無かったと記憶している。

「延期は残念ですが中止でなくてよかった」と我がチームのグループDMに書き込まれていたのを見て心底同意した。それにしても対岸の火事だと思っていたことが、僕の日常生活にまで食い込まれるとは。まるで映画のようだった。密とは無縁だと思っていたこの山形の地にも影響はあった。その間、いぢちさんたちとZwiftでゆるゆる室内サイクリングに興じることができていたのが救いだった。

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 時は流れ8月、オンライン飲み会というやつで改めて決起集会を図ったわれわれ「チームゆるふわグルべ」の5人は徐々に動き出す。リーダー兼定さんに引いていただいたルートを改めて精査し、仮眠ポイントはこことここで・・・という具合にやり取りを重ねる。今回のコースは軽井沢をスタートし、一旦茨城まで東へ進み、そこから熊谷・八王子を抜けていく。最後はナイスなサイクリストが集うナイスプレイスの山梨県石和温泉を目指す。標高1000mの軽井沢から下って距離を稼ぎ楽をして、その貯金で佐野ラーメンを食べる算段だ。「ゆるふわ」+「グルベ*2」を標榜とする我々ははたして、一兎どころではなく二兎を得れたのだろうか。

 フレッシュの時、基本的にメンバーは思い思いに、ばらばらに走ってはいけない。*3これが1番難しい。つまり走る・寝る・食べる・出す、含めて24時間どこでもいっしょ*4。人より食べられない・食べられる、眠い・眠くならないのようなそれぞれの違いが精神的・体力的なダメージをじわじわ削ることは過去何度も経験した。だから、今回のメンバーは走力・人となりをよく知る人たちで固まっている。

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今回のコース。

 久々に首都圏へ足を運ぶことになるので、せっかくだからと金曜の午後と月曜日に有給を取得して、友人などなどにフレッシュの後会う予定を立てた。東北から首都圏にこのご時世向かうことは、正直まだ帰って来て堂々と言えるような雰囲気ではなさそうだ。万が一道中で拾ってしまい、僕の住む街で広げてしまったら生きていくことはできないと、実際聞いた過去の事例から容易に推測できる。どうしようもないものだ。僕も数ヶ月も足を運んでいないとよくわからない情報に足をすくわれてしまう。凝り固まった考えだけではなく、そこに自分で見た景色を補いたい。とりあえずは気をつけて行動する。僕にできるのはそれだけだ。

 10月16日、秋が深まりつつあることを夜の肌寒さで実感する平日最終日の午後、酒田から新潟まで車を走らせ、そこから新幹線で軽井沢に向かう。電車に乗るなんて何ヶ月ぶりだろうか。前回乗ったのは東京出張のために2月末のことだったはず。乗客もまばらで、ほとんどが出張で移動していたサラリーマンだった。僕ひとりがいかにもこれから遊ぶぞという格好なので、リクライニングもして若干の優越感に浸っていたら大得意先から電話が入ってきた。悲しいかなわたしもサラリーマン。ちなみに車から電車への乗り換えで時間がなく慌てふためき、切符を撮った写真でも分かる通り手が油まみれになってしまった。もう少し落ち着いて生きることができないのか、俺。

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新潟はこんなに天気がよいのでした。

 

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死物狂いで出発3分前に新潟駅ホームへたどり着いた27歳男性の手。

 

軽井沢に6時すぎに到着。7時からみんなで夕食を取ることにしていたのでこの時間。それにしても寒い。気温は7度。平地で白い息が出るとは思わなかった。

 

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友達に持っていくお土産などを詰め込んだらにぎやかな自転車になった。

 今回初めて、大型サドルバッグを導入。TLでばるさん等へ相談の果てにトピークのバックローダー(10L)を購入。これなら2泊3日くらいのライドは全然問題ないし、道中お土産などを入れるには最適だ。感動した。

 

今回泊まる「ホテル軽井沢エレガンス」

www.karuizawa-elegance.jp

チェックイン時に気さくなオーナーと仕切り越しに談笑。どうやら元NSC5期生とのことで、東野幸治と同期らしい。それにしても、このホテルに気軽に止まることができたのはGotoほにゃららさまさまというか。気軽に泊まることができる背景を考えると、複雑な気分ではあるが活用させていただく。プレミアムクーポン券なるものを初めて入手してテンションがかなり上がったが、その後水没して紙屑となった。ちなみに部屋はかなり広々。悠々自適。

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 夕食は近くの「リストランテ ピエトリーノ」。ここで今回一緒に走るメンバー5人と合流。リーダーの兼定さん、ナラさん、たなさん、リョウ君、そして僕。全員がPBP出走者という心強いメンツだ。僕は土地柄簡単に会えないのでPBPぶりの再会だった。

 

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軽井沢らしい食事。グルベこれにて完。

一通りコース料理を頂いて、コンビニで食料を買い込み、ホテルに戻って最終チェック。12時ごろに就寝。

明日は午前9時から24時間フル稼働だ。「あれ、寝れない……???」と少し焦燥感を覚えたが、10分くらいたったところで意識は遠のいた。

 

*1: こんなロマン輝く歴史があるのですよ https://www.audax-japan.org/brevet/fleche/fleche-history/

*2:グルメとブルベの合成語

*3:https://www.audax-japan.org/wp01/wp-content/uploads/2017/09/6b4ea703091d2686bc72989b1e3972a2.pdf 細かい内容についてはここに書いてある。今回間違いはあってはならないと調べていたらしっかり書いてあった。すごい。

*4:どこでもいっしょN64からプレステ2に移行した家なので遊んだことはないけどトロは間違いなくかわいい。